前稿からの続きです。

新型コロナウィルス感染拡大が著しい73の上陸拒否対象の国・地域からの来日外国人の特例上陸要件である「特段の事情」について、法務省は公開している「速報値」・「報道発表資料」の中で、以下のように例示しています。

1. 国際線の航空機の運航のために必要な乗員(クルー)で、航空機の乗り継ぎ等のために短期間滞在し、宿泊施設で過ごす者

2-1. 令和2年4月2日までに再入国の許可(みなし再入国許可を含む。)により出国した「永住者」、「日本人の配偶者」、「永住者の配偶者」又は「定住者」の在留資格を有する外国人(これらの在留資格を有さない日本人の配偶者又は日本人の子を含む。)

2-2. 個別の特異な事情がある外国人等


上記1及び2-1ないし2-2をどう解釈するか?

1.について

♦特例上陸許可のうち、法16条(乗員上陸の許可)を根拠。単発許可と数次許可がある。上陸許可期間は、本邦に到着した日から15日を超えない範囲内。

♦乗員とは?船舶又は航空機(「船舶等」)の乗組員(法2条3号)。本件では、航空機乗員。当該航空機等を就航させている運送業者に所属する乗員で、同運送業者が就航させている航空機で出国する場合に上陸を許可。

♦どこから上陸している?出入国港。外国人が出入国すべき港又は飛行場。本件では、飛行場。航空機の入港した出入国港から出国する場合のみ許可。施行規則1条及び別表第一によれば、外国人が出入国すべき国内空港は、

北海道:新千歳、函館、旭川

青森:青森

宮城:仙台

秋田:秋田

福島:福島

茨城:百里

千葉:成田国際

東京:羽田

新潟:新潟県

富山:富山県

石川:小松

静岡:静岡

愛知:中部国際

大阪:関西国際

鳥取:米子

岡山:岡山

広島:広島

香川:高松

愛媛:松山

福岡:福岡、北九州

佐賀:佐賀

長崎:長崎

熊本:熊本

大分:大分

宮崎:宮崎

鹿児島:鹿児島

沖縄:那覇、新石垣

2-1.について

♦外国人とは?日本国籍を有しない者(法2条2号)。無国籍者も含む。日本と外国の重国籍者は日本人。

♦一般上陸許可。再入国許可を得た者なので審査項目は、旅券の有効性及び上陸拒否事由非該当性のみ。

♦身分・地位系の在留資格(法別表第二)。いずれも、外国人。

永住者:法22条によるグレードアップ資格。

特別永住者:入管特例法による。

定住者:在留期間に制限あり。法務大臣が、人道上その他の特別な理由を考慮。日系人や中国残留邦人など。

(特別)永住者の配偶者等:現に有効な婚姻関係にある配偶者(内縁はNG)及び本邦で出生&引き続き本邦に生活の本拠をおいて在留する子。実子(嫡出子&認知された非嫡出子)。養子は含まず。

日本人の配偶者等:現に有効な婚姻関係にある配偶者(内縁はNG)及び本邦内外で出生した子。実子(嫡出子&認知された非嫡出子)ないし特別養子(普通養子は含まず)。

♦その他法別表第二に加え、法別表第一にある在留資格を有しかつ日本人の配偶者をもつ外国人及びその子(実子はOKであるが、普通養子はNGではないか?)

2-2. について

♦一般上陸許可(特に難民旅行証明書所持者か?)。法16条以外の特例上陸許可(寄港地上陸、船舶観光上陸?、通過上陸、緊急上陸、遭難による上陸、一時庇護のための上陸)等。

♦立法技術上、全ての事由を列挙し尽くすことは不可能であるため、政策上の裁量を行政側に残すための「個別の特異な事情」か?

♦「外国人等」。「外国人」の他?乗員、無国籍者、難民認定申請者、日本と外国の重国籍者で何らかの理由により外国の旅券で入国した者などか?


取り急ぎ、思いつくままにメモしてみました。

法務省が措置を重ねていくうちに、公表される例示事項も増えていくのかもしれません。


因みに...

北海道での出入国港としては、

空港:新千歳、函館、旭川

の他、

紋別、網走、花咲、釧路、苫小牧、室蘭、函館、小樽、留萌、稚内、石狩湾新港

の各港で船舶乗員の出入国が行われています。

今後対象国(拡大すると思われます)の乗員が入国した場合、上記11港湾でも上陸拒否に係る措置がとられるのか注視したいと思います。

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