前稿からの続きです。
上陸申請前14日以内に、87の「上陸拒否対象地域」における滞在歴がある外国人を、今日時点で本邦に上陸させる際、日本国はいかなる条件を当該外国人に要求しているのでしょうか?
4月27日付で法務省が公開している「新型コロナウィルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否について」の記述から判断するに、ひとことで言えば、
「特段の事情」があることです。
解釈の幅が広く、実に悩ましい表現ですね。
ただ、この「特段の事情」は、これまで法務省が公開してきた3つ資料、
♦「新型コロナウィルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否について」、
♦月別の「速報値」(以下、「速報値」)、
♦「新型コロナウィルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否の措置及び同措置に係る"特段の事情"について」(以下、「報道発表資料」)
からある程度のカテゴリーにグルーピングできそうです。
このカテゴリーとは、敢えてネーミングを施すと、
1.「身分系 / 再入国」カテゴリー
2.「特例上陸」等カテゴリー
の2つです。
1. は「新型コロナウィルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否について」ないし、「速報値」、「報道発表資料」にある記述から、
2. は「速報値」、「報道発表資料」にある記述から
から導出されます。
まづ、「身分系 / 再入国カテゴリー」から見ていきましょう。
1.「特段の事情」その1:「身分系 / 再入国」カテゴリー
以下の§1ないし§4のいずれにも該当していること。
§1. 在留資格要件
入管法別表第二にある在留資格「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」ないし、「定住者」を有していること。
又は、
上記4つ以外の在留資格を有する日本人の配偶者(=外国人)又は日本人の子(=外国人)であること。
§2. 在留実績継続要件
日本出国前に、みなし再入国許可又は通常再入国許可を受けていること。
§3. 出国日 / 滞在歴要件
本年4月2日前に出国していること。
又は、
上陸申請前14日以内に、新規追加された14カ国における滞在歴を有する場合、4月3日から4月28日の間に出国していること。
§4. 上陸拒否事由非該当性
上陸拒否事由14号を除く、1号ないし13号に該当していないこと(5条の2に該当する場合を除く)。
2.「特段の事情」その2:「特例上陸」等カテゴリー
2-1. 特例上陸(在留資格不要の上陸)
入管法の
14条 寄港地上陸
14条の2 船舶観光上陸
15条 通過上陸
16条 乗員上陸
17条 緊急上陸
18条 遭難による上陸
18条の2 一時庇護のための上陸
に該当するもの。
2-2. 特別永住者(在留資格不要の在留)
2-3. その他(法務省発表資料に例示がないもの)
入管法の
13条 仮上陸の許可(在留資格なしの上陸)
13条の2 退去命令を受けた者がとどまることができる場所(在留資格なしの上陸)
5条の2 上陸の拒否の特例
61条の2の4 仮滞在の許可(在留資格なしの上陸)
に該当するもの。
以上となるでしょうか。
「速報値」、「報道発表資料」の記述には、「特段の事情」の例示として、
国際線の航空機の運航のために必要な乗員(クルー)で、航空機の乗り換えのために、短期間滞在し、宿泊施設で過ごす者
とあり、
16条 乗員上陸のケースが、「特段の事情」として例示されています。
北海道内の港湾には、ロシア人船員を乘せた船舶が定期的に入港しますが、「特段の事情」が、上陸拒否対象地域からの国際線の航空機の乗員のみならず、同地域国籍の外航船舶の乗員あるいは同地域船籍の船舶にも適用されることになるのでしょうか(最も、船員自体が本邦への上陸自粛に努めています)?
管海官庁等が開庁する連休後には明らかになることでしょう。