「我が国領土の譲渡禁止を憲法で明文化してもよいのでは。引き渡しはおろか、交渉を行うのもだめ。もってのほか」。
プーチン大統領が年次教書で改憲をぶち上げ、いつのまにか設立されていた「改憲法改正ワーキンググループ(参与機関ではなく、あくまで諮問機関?)」。
メンバーには、三権の代表や学識経験者(そりゃそうでしょう)の他に、様々な「社会活動家」も含まれています。
「社会活動家」とは?芸能人やスポーツ選手や受勲者など、体制にとって比較的「都合の悪くない」あるいは、「使い勝手の良い」面々であることが少なくありません。
冒頭の発言は昨日大統領も出席して行われた同ワーキンググループの席で、俳優・映画監督などを務める、ウラジーミル・マシコフ氏の口から飛び出したもの。
「北方領土」を管轄するサハリン州リマレンコ知事は、ちょうど、国後と歯舞の水産品加工場の視察を終え、この発言を耳にし、「地元民にとって重要な発言。クリル諸島(=北方領土)の帰属という無意味な思惑に最終的かつ不可逆的なピリオドを打つ、まっとうな考え」とコメントしています。
ロシア領土といっても、「北方領土」の他に、クリミアやら飛び地であるカリニグラードやらの地名も発せられました。
冒頭の発言のみを切り取るとなかなかセンセーショナルな発言であるととらえてしまいそうですよね。
では、マシコフ氏以外の、敬愛なる「社会活動家」の方々は昨日のワーキンググループの席でどんな発言をしたのでしょう?
例えば、オリンピック棒高跳で2度金メダルに輝いた、エレーナ・イシンバエワ女史は、
「ワーキンググループに加えていただきありがとうございます。我が国の憲法を読んで大事なことなんだなって思いました。これまで憲法を読む動機も必要もなかったんですけど、憲法はとても大事な"本"なんだなと思います。皆が読むべきです。憲法を読んで沢山おもしろい発見をしました」。
ある意味、"素直"な方です。ワーキンググループのメンバーという名誉職に選ばれて慌てて憲法に目を通したのでしょう。これには流石にプーチン大統領も苦笑の色を隠せませんでした。
改憲にのぞむ「社会活動家」枠の、ロシア全国区の知名度を誇る御仁と御婦人の発言でした。自分に何が求められているかよく理解されたうえで、お二人とも大統領を前に発言しているのでしょう(ということもできる)。
取り急ぎ、報道を見て大騒ぎする以前に、「これ以上でも以下でもない」ことをお伝えするために投稿させていただきました。
ちなみに...
上記のマシコフ氏とリマレンコ知事の発言は、サハリン州のローカルテレビ局(2月14日放送)であるASTV(2:52-4:05)とOTV(2:36-3:46)で視聴可能。
一方、上記のイシンバエワ女史の素直な発言は、私がかつて所属したSPUTNIKで視聴可能です。
追記:執筆途中でこの件に関する本邦マスコミの報道が出ましたので、比べてみるとよいかもしれません。