最終回です。平和条約、地域・姉妹都市交流年、査証発給体制と続き、最後のテーマは、2国間協力の展望です。
ロシア国営ノーヴォスチ通信が伝えています。
本省第3アジア局ロ日経済協力部長や駐日ロシア連邦大使館にて経済部参事官を歴任されたマーリン氏は、在札幌ロシア総領事として、ロシア国内の自治体(=連邦構成体)と北海道との経済交流の促進を、自らの最重要課題と考えておられるようです。
具体的には、観光、漁業・養殖といった分野を挙げておられます。北海道を日本海と太平洋ないしオホーツク海に囲まれた地であることを念頭に置いているのでしょう。
経済面では、「ロシア国内の極東地域やシベリアの開発(=国の行政計画)に日本の財界や実業界も"参加"すべし」。
文化面では、今年、札幌市とノヴォシビルスク市との姉妹都市交流が30周年を迎えることや、北海道とサハリン州との関係を挙げておられます。
ここまでです。
ロシアとの協議の席では「共同」、「協力」ということばが散見されますが、ロシア側が語る「共同」ないし、「協力」の内容はどうでしょうか?
私たちが「共同」、「協力」、「協業」ということばを耳にすると、"コストもプロフィットも仲良く同比率で分担"する。更には、各出資者・各参加者が有する経営資源や強みを提供しあって、1+1=2どころか、1+1=4になるくらいのシナジー効果・相乗効果を獲得したい。我が国の事業体で大多数を占める中小企業であるなら尚更です。
シンプルに、自社の強みを蓄積しつつ、最終的に「自社の売上(最終的には純利益)向上に寄与するのか?」が諸々の「協力」、「協業」に参加するか否か判断する基準になるのではないでしょうか。
かつては、シベリア鉄道などのインフラ建設に、日本人軍人捕虜が動員されました。
3・11の大震災の際、シベリア開発に日本の被災者を迎え入れるという案もありました。
そして、今、モスクヴァからみれば未墾の地である極東・シベリアの開発にジャパンマネーを誘致したいとのことです。
上記、3つの例に共通しているのは、ロシア側からの(経営)資源の投入が見込まれていないこと。これも受益者側からすれば、立派な「協力」の一形態であるという解釈も不可能ではありません。
今年は第二次世界大戦終結75周年。9月2日まで「対日戦勝記念75周年」が声高に叫ばれることでしょう。戦勝国であるロシアは、敗戦国である日本に対し、引き続き、「第二次世界大戦の結果を認めろ」と事あるごとに求めてくることは想像に難くありません。
こうした現実と向き合い、2国共同で何らかの事業を進める際、真の"WIN-WIN"の関係を達成してもらいたいものです(できれば、自社よし+取引先よし+社会よしの「三方よし」)。また、そうすることで、そこで得たノウハウが日本での主力事業にもフィードバックされることでしょう。